官僚ブログ

官僚の卵(自称)が、日々のよしなしごとを綴る。

「国会答弁の裏側で」(おしごと紹介③)

「国会答弁の裏側で」

ー国会で大臣や政府参考人が議員の質疑に答える。その背後には、官僚たちの夜を徹した壮絶な闘いがある。その「絶対に負けられない闘い」(笑)について、今週初めて国会対応を経験(まさかの二日連続)したので、ルポルタージュ風?にまとめてみたー

※実体験を基にしているものの、ところどころ脚色したフィクションです※

 

[前提知識]

・日本の国会は、委員会制度を採用していて、基本的に省庁毎に分けられた委員会において実質的な議論(審査)が行われる。(議員全員が出席する本会議は、委員会での議論を基に多数決を採るのが役割である。)

・委員会では、主に、与野党の議員があらかじめ決められた時間内で質問をし、政府(大臣や政府参考人(※偉い官僚等))がそれに答えるという方法で議論を行う。

・委員会で質問する質疑者は、あらかじめ政府側(答弁者)に質問を通告することになっていて、政府側はその質問に対する答えを準備しておく。

※わかりやすい説明は、こちら↓↓(子どもには難しすぎるキッズページw)

委員会の審査:国会のしくみと法律ができるまで!:キッズページ:参議院

 

 

◇序:委員会開かれるって!

6月17日、第201回国会が閉会した。

その1週間ほど前、コロナの影響でしばらく開かれていなかった○○××特別委員会(○×特委)が参議院で開かれそうという情報が国会から入ってきた。委員会の与野党筆頭理事同士で調整中だという。(委員会の日程や議事内容などは、委員の中から任命された理事によって決められる。与野党の理事の中のトップを筆頭理事と言う。正式には、委員会の前に開かれる理事会(非公開)で、委員会の進行や議事運営は決定されるが、実際には、理事同士の非公式な協議で決まることが多い。

翌日、参議院○×特委が開かれるなら、衆議院○×特委も開くべきということで、衆・参と二日連続で○×特委を開くことになりそうだという情報が入ってきた。しかも、国会閉会後の18日、19日で。面白いのは、野党が会期の延長を要求することになっているから、委員会の開催が正式に決定するのは、その会期延長要請が却下されてからだという。

その日から、議員からレク要求がひっきりなりに届くようになった。「勉強レク」と言って、(委員会で質問することになったから)どういう政策やってるか教えてくれという依頼である。資料をメールで送ればいいだけのものや、電話で説明をするもの、議員会館に出向いて説明するもの等、内容も時間もバラバラな要求がひっきりなしにやってくる。

例えば、「○○について教えてほしいから、明日の15時に議員会館の部屋に来て欲しい。」という具合である。その場合、誰が説明に行くのか「今日中」に教えなければならない。(議員に説明に行くのは基本的には補佐級以上である。)

総括係員(調整担当※自分の隣のライン)の仕事は、極めて短時間で誰がどういう対応をするのかを決定し、総括参事官の了解を得た上で、担当に割り振ることである。時間に余裕があれば造作ないが、議員の要求は基本的に締め切りが短い!それが、複数一気に来るのである。そして、自分の部局だけでは答えられない要求も多い。その場合は、多部局あるいは他省庁と協力して対応することになる。

A議員から資料要求。本日18時まで。

B議員からレク要求。明日の15時から。担当者登録本日18時。

C議員から答弁ライン要求。明日の12時まで。

D議員から電話レク要求。本日18時から。

E議員から相談要求。明後日13時から。

・・・・・

今回、一番大変だったのは、C議員の要求であろう。「こういう質問するから、どんな感じで答弁するのか教えて。実際に質問するかどうかは、それを教えてもらってから決めるから。メールで送って。」というものであった。しかも、質問が多く、他省庁の協力を必要とするものが多かった。

そんなこんなで、数日かけて、議員の要求に応える中で、なんとなく質問者とその質問内容が見えてくるようになった。ただ、特に要求をしてこない議員もいるし、質疑者の全員が明らかになったわけではなかった。

 

◇前夜、むしろ当日の朝。

そして、委員会前日を迎えた。上司には、家には帰れないから準備してくるように言われていた。

朝は比較的静かであったが、まずは「問取り」が待っている。上記の勉強(レク)を踏まえて実際に委員会でなんて質問をするのか、議員に聞き取りに行く必要があるのだ。もちろん、議員の指定した時間・場所・方法によってである。実際にどのような問題意識をもっていてどのような質問をしてくるのか知るのは極めて大事である。「○○について」とだけ言われても、具体的にどんな答えを用意すればいいかわからない。そして、誰に答えてほしいのかという重要な問題もある。大臣が答えるのか、政府参考人(部局トップなどの官僚)に答えるのでも良いのか。そもそも、うちの部局ではなくて、他省庁が答えるべきなのか。明らかにしなくては準備はできない。が、問取りは、基本的に前日の午後に行われる。だから、答弁作成も遅くなる。

実際に聞き取りに出向かないパターンもある。要旨対応と言って、こんな質問をするという紙が送られてくる。その場合、電話で質問していいことも多いが、「○○について」とだけ書かれていて質問も不可だと、いろいろな想定の下たくさんの答弁案を作成しなければならず、大変である。(幸い、今回はなかった。)

A議員:問取りレク。16時から。

B議員:要旨対応。

C議員:問取りレク。20時から。

D議員:問取りレク。15時から。

E議員:要旨対応。

・・・・・

C議員の要求は、「今すぐ議員会館に来い」というものであった。問取りができた議員の質問から順次、答弁を作成していくから、まさに答弁作成中のさなか急な呼び出しであった。

21時、ようやく全質疑者の問が確定した。

衆○×特委では、質疑者は9人で、そのうち2人は、うちの部局が答える質問がゼロであったから、合計7人の質問に対応することになった。(忘れてはいけないのは、二日連続開催のため、参の議員からの要求も同時に来ていたりした。)

 

答弁作成の流れは、ざっと次のような感じである。

1.問表をつくる。(問取りを参考にどんなことを聞かれるのかまとめる)

2.各担当が質問毎に答弁案を作る(各担当参事官(各担当のトップ)がOKを出す)

3.総括参事官(部局の実質NO2)が確認し修正を指示し、OKを出す(総括係員が各担当と総括参事官を仲介する役目を担う)

4.統括官(部局トップ)が確認し修正を指示し、OKを出す(統括官が答弁者の場合は完了→6へ)

5.大臣室の秘書官が確認し修正を指示し、OKを出す(大臣答弁の場合)

6.同時に、他省庁作成の答弁を取り寄せる。

7.すべての質問の答弁を総括担当係員で印刷し綴じる。(答弁者用など6セット程)

 

複数の質疑者の複数の質問に対する答弁(原稿)を、同時並行で作成していく。今回は、全部で10個の質疑に対する答弁を作成した。自分の仕事は、主に、問表を作成しそれぞれの答弁がどういう状況にあるのか進捗を管理することであった。

答弁には、大臣や統括官(部局トップ)が答える際に困らないように必要な情報を詰め込む。国会での答弁は、当然ながら公開され記録され、政府の公式見解となる。大臣であっても、個人的な見地に基づく意見表明は好ましくない。過去の答弁と矛盾することがあってはいけないし、政府の方針と異なると思われるようなことも許されない。

 

21時半、統括官が帰宅。これ以降は、メールで確認するという。

24時半、総括参事官も帰宅。この時点で、残りは、秘書官の確認が必要な大臣問だけになっていた。この頃から、完成した答弁を印刷し始める。

2時半、秘書官の修正およびチェックが全て終わる。

全ての答弁を印刷し6セット綴じる作業が終わったときには、とっくに空が明るくなっていた。1セット100ページくらいあるため印刷するだけでも時間がかかるが、質疑者ごと問ごとにインデックスシールを貼る作業がなかなか大変である。

5時、退庁(タクシーチケットで帰宅)

 

◇当日、委員会開催。

9時半、登庁。

なんと、朝8時にB議員より追加の質問が来ていた。前日先に帰り先に来ていた主査が対応。10時~答弁者の打ち合わせだったが、なんとか打ち合わせ中に完成。

13時に委員会開会、予定通り2時間半で終了した。答弁者の他には、参事官や答弁を作成した担当が委員会室に出向く。自分たちは執務室のテレビで中継を眺めていた。長い「闘い」を経てここまでたどり着いたという達成感を覚えながら、大臣や統括官が答弁するときは少しばかり緊張した。

同時に、翌日の参・委員会の問取りも始まっていた。(もう一日、同じような流れを繰り返したのだが、ここでは割愛する。参は質疑者が7人で、うちの部局への質問がゼロの人が3人もいたし、また、2日連続で慣れていた?こともあり、奇跡的に1時過ぎには答弁を綴じおわった。)

 

◇つまらないあとがき

国会対応は、国家公務員にとって最も重要な(そして花形的な?)仕事ではないだろうか。国権の最高機関たる国会において、政府の施策を説明し、見解を表明する機会である。2日目の参議院の方は、委員会室の末席で傍聴したが、あの厳粛な雰囲気と緊張感には興奮を覚えた。何気ない日々の業務も、究極的にはここにつながっているのだと改めて実感した。国会の場において、自分たちが朝までかかってセットした答弁(原稿)が読まれていた。

それから、日本の国会は「アリーナ型議会」(※政治学の概念)であると改めて思った。原稿を読むだけで、実のある議論がなされていないという声も聞かれるが、与野党議員と政府がそれぞれ意思・見解を表明するというアリーナ(劇場?)を提供するのが、最大の役割なのである。質問をされ、それに答えようとすると、改めて施策について考えるきっかけになるし、アリーナ型の質疑形式も意味があると思った。

 

 

(長々と書いてしまったが、もう少し文章力が欲しかった…)

 

※※このブログの内容は全て個人的な見地・見解に基づくもので、所属する組織とは一切関係ありません※※